あなたの「債権」回収できる?できない?


―法的手段によって債権回収するための必要条件―

目 次

1 債権回収とは

2 条件Ⅰ:相手方の所在を把握できること

3 条件Ⅱ:相手方の支払義務の存在を証明できること

4 条件Ⅲ:相手方に支払能力があること

5 その他考慮すべき点

6 結語

 人から頼まれてお金を貸したけど返済してもらえない、掛け払いで取引したものの代金を支払ってもらえない、請負の代金が支払われない、養育費が未払いになっている、家賃の未払いが続いているなど、相手方に支払義務があるにもかかわらず、その支払いをしない場合に支払いを求める手続が「債権回収」です。弁護士が法的手段を用いて債権回収をするために必要となる3つの条件について解説します。


 法的な手段をとるためには、相手方の住所を把握している必要があります。弁護士が発送する内容証明も、裁判所の支払督促や裁判も相手方の住所が分からなければすることができません。そのため、氏名も住所も分からない相手方に対する法的な債権回収はできないといえます。相手方の自宅住所か勤務先住所が分かっている場合、弁護士会照会によって住所の割り出しが可能な携帯電話番号や預金口座情報、自動車のナンバープレート等の情報がある場合は、条件Ⅰを満たすことができます。

 消費者トラブルの投資詐欺やマッチングアプリで出会った相手に金銭を渡したケースでは、ほとんどのケースで条件Ⅰをクリアすることができず、断念せざるを得ないことが多いです。なお、相手方が金銭を騙しとった態様によっては、刑事事件として取り扱うことのできる可能性があるため、警察への相談を考えることになります。ただし、詐欺罪を問うためには、金銭を受け取る時点で返金の意思がないこと(主観の立証)が必要となるため、立証のハードルが高いうえ、仮に刑事事件化しても実際の回収は難しいということには注意が必要です。


 相手方の所在を把握できる場合、次に問題となるのは「相手方の支払義務」の証明です。支払期限(いつまでに)と支払額(いくら)が記載された有効な契約書や借用書、調停調書がある場合、書面はないが相手方自身が支払義務自体を認めている場合は、条件Ⅱを満たし、支払義務が「法的」に認められることになります。

 契約書等の書面がなく、相手方が支払義務自体や支払額を争う場合は、裁判所の裁判により決着をつける必要があります。相手方の支払義務を証明しなければならないのは、支払いを求める側にありますので、双方の完全な口約束では足りず(こちらが合意したと主張すれば、相手方は合意していないと答えるため、それのみではどちらが正しいかを判断できない)、相手方が「返済する」、「支払う」と認めていた過去の具体的なやり取りがなんらかの形で残っている必要があります。相手方の支払義務が「法的」に認められることで、判決後に財産差押えという強力な回収手段を利用できるようになります。


 当然のことではありますが、債権回収のためには、相手方に回収できるだけの財産があることが必要です。現実として、相手方が財産を有していなければ、法的な債権を有していたとしても、実際には回収できないことになります。また、債権額が大きい場合は、請求を受けた時点で破産されてしまう可能性もありますので、支払能力の有無は重要な考慮要素です。

 相手方の事情なのでこちらで把握することは難しいですが、相手方の資産状況について身なりや会話の中からある程度知っておくことや、勤務先の情報を確保するなどの対応が必要です。相手方が「支払える財産はない」と支払いを拒んだとしても、現実に財産を有しているのであれば、不動産差押え、預金差押え、給与差押えによって回収を図ることができます。したがって、「差押えができる」財産の有無は意識しておくべきです。

 なお、できることなら契約の時点(金銭を交付する時点)で将来の未払いに備えて保証人や担保を設定するといった対策をとっておく方が無難でしょう。


⑴ 消滅時効の問題

 債権は、[1]権利を行使できることを知った時から5年、[2]権利を行使することができるときから10年で消滅時効となり、相手方が時効の主張をすれば、法的な権利として消滅することになります。売買や金銭貸借、請負などは、契約により支払期限を定めた時点で「権利を行使できることを知った」に該当しますので、未払いになった状況をそのまま放置して5年経過すると、その債権は法的に回収できなくなります。

 また、未払いが発生した後に、期間を空けてしまうと、相手方は「支払わなくても特に何も言ってこないから、問題ない」と考え始め、支払いを催促してもその効果が弱まりますので、未払いとなった場合には、速やかに行動に移るべきといえるでしょう。

⑵ 弁護士費用の問題

 債権回収において、弁護士を利用する場合、弁護士費用が別途必要となります。契約書等で特約がある場合を除き、弁護士費用を相手方に負わせることはできないため、自身で負担する必要があります。弁護士の業務として、内容証明作成(弁護士名の文書を発送し、その後の交渉は自身で行う)であれば数万円の費用で対応する事務所も多いと思いますが、その先の交渉や支払督促、裁判となると、着手金と成功報酬を合わせて最低でも30万円以上は必要となります。そのため、回収する債権額と弁護士費用のバランスを考えて、弁護士に依頼するか否かを判断する必要があります。実際上、債権額50万円以下の場合、弁護士による債権回収は費用対効果があまりよいとはいえませんので、自分で内容証明を作成したり、簡易裁判所の支払督促を利用したりすることを考えた方がよろしいでしょう。


 法的手段による債権回収を行うための必要条件と考慮事項を解説しました。実際のご相談の場面で、いずれかの条件が欠けているため、法的措置がとれない例も多く見受けられます。実際に未払いとなってから「相手方がまさか未払いをする人だとは思わなかった。」という気持ちであると思いますが、自分の大切な財産ですので、相手方に交付する際はより慎重になって書面に残すことを徹底した方がよいでしょう。金銭を交付する前段階が相手方も一番こちらの言うことを聞きますし、未払いをする気持ちがないのであれば書面に残すことに躊躇いを見せないはずです。

 また、契約書等があるものの相手方が支払いをしない場合は、未払いが発生した時点から日を空けることなく督促等の次のステップに進めることが、債権回収の成功率を高める手段となりますので、「相手方にも何等かの事情があるだろうから」と遠慮することなく、自身の「権利」を守るための行動をしましょう。

 上記3条件がそろった債権回収で、自身での対応に限界を感じたときは、弊所までご相談ください。可能な限りの手段を用いて、大切な「権利」の実現を目指します。


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