「不貞慰謝料」の賠償請求


―不倫によって発生する慰謝料とは―

目次

0 不貞慰謝料とは

1 【条件Ⅰ】請求する不貞相手の住所が分かること

2 【条件Ⅱ】不貞行為の証拠があること

3 【条件Ⅲ】不貞相手が既婚者と認識していること

4 【条件Ⅳ】夫婦関係が破綻していないこと

5 結語

0 不貞慰謝料とは

不貞慰謝料は民事上の損害賠償請求(不法行為)の一種として認められています。不貞行為の違法性は「婚姻共同生活の維持という権利又は法的保護に値する利益」を侵害することであって、侵害行為をした配偶者(自身のパートナー。夫または妻)と不貞相手のいずれに対しても慰謝料請求をすることができます。自身のパートナーが不貞行為に及んだ場合に、法的に慰謝料請求をするための条件を解説します。

1 【条件Ⅰ】請求する不貞相手の住所が分かること

配偶者の不貞相手に対して、法的に慰謝料請求を行う場合、まずは、不貞相手の住所についての情報が必要となります。住所がわからないと、弁護士からの受任通知によって慰謝料請求の意思表示をすることができず、また、裁判手続の利用もできません。

不貞相手の住所を把握するうえで最も容易な方法は、①不貞当事者である配偶者から聞き出すことです。特に不貞は発覚したものの、離婚せずに夫婦関係を続けるのであれば、配偶者への慰謝料請求をしないことを約束することで協力してもらうことも考えられます。マッチングアプリ等で知り合い、連絡手段が限られているという場合、②携帯電話の番号や預金通帳、自動車のナンバープレートなどから住所を割り出す方法もあります。一定の情報から住所を調査するためには、弁護士会照会の手続を利用する必要がありますので、この方法は弁護士への依頼が必要です。配偶者から聞き出すことができず、住所の手がかりとなる情報もない場合、③探偵による調査を行うか請求を断念するかを選ぶ必要があります。探偵費用が高額になり、不貞慰謝料を獲得しても十分に回復できないケースも散見されるため、探偵に依頼する前の段階で弁護士への相談をして見通しを確認することをお勧めします。

また、勤務先の住所でも代用可能ですが、事情を知らない職場の同僚に不貞の事実が明らかになることは、不貞相手に対する名誉毀損に該当する可能性があります。そのため、職場宛の連絡は慎重に考える必要があり、どうしても自宅住所にたどり着く手がかりがない場合の最終手段として理解すべきです。

2 【条件Ⅱ】不貞行為の証拠があること

裁判実務上、不貞行為とは「性交渉の存在」を指します。手をつないでデートをしていた、2人で一緒に食事をしていた、直接会ってはいないがLINEで過激なやり取りをしていた、外で抱き合っていた等は、夫婦間の信頼を揺るがすものであっても、法的には慰謝料が発生する不貞行為(違法行為)に該当しません。

不貞当事者(配偶者と不貞相手)が、「性交渉をしていました。」と認めるのであれば証拠は不要ですが、素直に認めることはむしろ稀であって、慰謝料を請求すると、「性行為はしていない」「配偶者が積極的だった」「夫婦関係が破綻していた」「既婚者だと知らなかった」等、自己の責任を否定することが大半です。不貞行為自体を認めるとしても、頻度や回数を少なく申告することもありますので、法的に正当な金額の慰謝料を請求するためには、証拠が不可欠です。

不貞の証拠は、「性交渉の存在」を示すものです。直接的な証拠として、性行為の際の動画や写真、音声などがもっとも強く、ラブホテルや自宅への出入りの様子も強い証拠といえます。配偶者と不貞相手のLINEのやり取りについても不貞の存在をうかがわせるような生々しい表現(「気持ちよかった」「何時にホテル集合」等)があれば、証拠として十分に活用できます。配偶者がいつどこで誰と不貞に及んだという内容を記載した誓約書も証拠の一つです。GPS履歴や航空券の予約画面を証拠として持参される方もおりますが、これらの証拠は「誰と誰が」の証明に難があることが多いため、単体では証拠として弱いと言わざるを得ません。自分が作成した日記帳にメモが残っている、知人から怪しい関係の人物がいると聞いた等は、客観性に乏しいため、弱い証拠といえます。不貞の証拠とは、①誰が見ても、②明らかに性行為があったといえるもので、③否定する言い訳が不自然になってしまうもの、という基準で考えたらよいでしょう。

3 【条件Ⅲ】不貞相手が既婚者と認識していること

不貞相手において、配偶者が既婚者であることを認識していたことが必要です。不貞慰謝料も民法上の不法行為であるため、自分自身の行為が不貞(既婚者と性交渉をもつこと)に該当することの認識(故意)または、一般的にみて既婚者であると知ることができたであろう状況があった(過失)の存在が不可欠です。裁判の場面では、配偶者が結婚指輪をしていた、携帯の待受画面が子供の写真だった、不貞の際に利用した自動車にチャイルドシートが設置されていた等を根拠として、既婚者の認識を証明していくことになります。

一方、配偶者が不貞の際に既婚者であることを隠して性的関係を持つ場合もあります。不貞相手は、既婚者の認識を持つことすらできないため、不貞慰謝料を請求することはできません。さらには、配偶者が未婚と称して、将来の結婚を仄めかしていたという事情があるときは、不貞相手から配偶者に対し、「貞操権侵害」を理由とする慰謝料請求が可能となりますので、不貞慰謝料の請求を検討する際には、配偶者から事情を確認する必要があります。なお、不貞相手が未成年者の場合、条例違反や不同意性交などの犯罪が成立する可能性もありますので、あえて不貞相手への慰謝料請求をしないということも考えられます。

4 【条件Ⅳ】夫婦関係が破綻していないこと

不貞慰謝料は「婚姻共同生活の維持という権利又は法的保護に値する利益」を侵害することで発生する権利です。すなわち、不貞行為があった時点において、夫婦の関係が冷え切っており、夫婦の実体が形だけになっているときは、たとえ、事実として不貞があったとしても、慰謝料は法的に発生しないことになります。

夫婦関係の破綻は、請求を受けた不貞相手の側からよくなされる主張ですが、この点についての裁判所の判断は厳しく、口喧嘩が絶えなった、セックスレスであった等ではまったく足りず、不貞行為の時点で別居を開始していた、離婚調停が係属していたなど、誰がみても夫婦関係が終焉に向かっていたといえる客観的な事情の存在が必要とされています。そもそも、不貞相手は配偶者からの伝聞で夫婦関係を知るに過ぎず、リアルな夫婦関係の実体を証明することは困難ですので、仮に破綻の主張をされたからといって、弱気になる必要はありません。不貞の被害者なのですから、堂々と権利を訴えましょう。

5 結語

上記の4つの条件を満たす場合、法的に不貞相手に対する慰謝料請求をすることができます。不貞慰謝料にも一定の目安は存在しますが、元来、精神的苦痛を慰謝するための賠償請求である以上、具体的な事実関係によって上下する側面がありますので、現実の事実を効果的に主張して、納得のいく慰謝料を確保するためにも、まずは弁護士への相談をご検討ください。


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