
―手続段階に沿った用語解説―

目次
第1 捜査の開始段階
第2 捜査段階
第3 起訴後の段階
第4 その他
第1 捜査の開始段階
【捜査機関】
犯罪の捜査を行う権能を有する機関。司法警察職員、検察官、検察事務官。
【自首】
犯罪を行った者が、捜査機関に犯罪事実が発覚する前に、自ら犯罪事実を申告し、処分を求める意思表示をすること。
【職務質問】
司法警察職員が何らかの犯罪を犯し、または犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由がある者等を停止させて質問すること。
【任意同行】
捜査対象の者に対して警察官が警察署への出頭を求め、同意の下で出頭させること
【取調べ】
捜査機関が被疑者、被告人、参考人に対し、事情を聴くこと
【被害届】
被害に遭った者が、捜査機関に対し、被害の事実を申告すること。
【任意同行】
裁判所が強制的な捜査を認める許可状。逮捕状、捜索差押令状、勾留状など。任意捜査を超えた強制捜査をするためには令状が必要となる。
第2 捜査段階
【被疑者】
捜査機関から犯罪の嫌疑をかけられ捜査対象となっている者の名称。
【弁護人】
犯罪の嫌疑を受けて捜査対象となっている者(被疑者)、起訴されて刑事裁判を受ける者(被告人)の権利、利益を守るための弁護活動を行う者。弁護士から選任される。
【身柄事件/在宅事件】
身柄事件とは、逮捕・勾留により被疑者の身体を拘束した状態で捜査を行う事件をいう。検察官が処分するまでに時間制限がある。在宅事件とは、逮捕・勾留をすることなく、捜査を行う事件を言う。基本的には、警察から取調べ日時の打診があり、警察署を訪問して取調べを受けることになるため、日常生活を継続することができる。
【否認/認め(自白)】
自身が嫌疑の掛けられている犯罪事実や犯人性を否定することを否認という。嫌疑の掛けられている犯罪事実について争わないものが認め(自白)という。
【逮捕】
被疑者に対する短期間の身体拘束。逮捕後、最大72時間以内に勾留をするかしないかを判断する必要がある。
通常逮捕:裁判所の発布した逮捕状により逮捕する。
現行犯逮捕:現に罪を行い、または現に罪を行い終わった者を逮捕する(令状不要)
緊急逮捕:緊急の場合に一定の条件の下、逮捕を先行させ、事後的に逮捕状を請求する
【当番弁護】
逮捕から勾留までの間に、弁護士会から派遣される弁護士。被疑者・被告人と接見し、刑事手続の説明等を行う。
【微罪処分】
あらかじめ検察官が指定した条件を満たす一定の軽微犯罪について、事件を検察官に送致することなく、警察限りで終結させる処分。
【検察官送致(送検)】
司法警察員が被疑者・事件を検察官に送致すること。身柄事件の場合は、被疑者の身体と事件が検察に移るため通常の送検。在宅事件の場合は事件のみ(事件記録・捜査資料)を送る書類送検となる。
【勾留】
被疑者または被告人の身体を警察の留置施設または拘置所に拘束する手続。
【検察官による勾留請求】
被疑者について逃亡や罪証隠滅(証拠隠滅)のおそれがある場合、検察官が裁判所に対し、身体拘束を求める手続。
【裁判官による勾留質問・勾留決定】
勾留請求を受けた裁判所の裁判官が被疑者に対して、被疑事実の存否、勾留の必要性等の有無を判断するために行う質問。勾留することが適当と判断した場合は、勾留決定により、勾留が開始する。
【警察署の留置施設】
警察署内に設けられている一時的な収容施設。逮捕・勾留中に生活する場所。警察署の規模により留置施設がない場合もある。また、留置施設の定員が超過している場合は最寄りの警察署の留置施設を利用することもある。
【国選弁護人】
被疑者及び被告人が貧困等の理由で自ら弁護人を選任できない場合に、本人の請求またが法律の規定により国が費用を負担して、裁判所により選任される弁護人。資力要件あり。
【供述調書】
捜査機関の取調べにおいて、被疑者や証人の供述内容を記録した文書。取調べ後、記載内容に誤りがないかを確認され、供述者の署名押印を得て、有効な調書となる。
【黙秘権】
自己に不利益な供述を強制されない権利。黙秘したことを理由に不利益に取り扱われることはできない。黙秘については有利にも不利にもはたらかない。
【接見/接見禁止】
留置施設や拘置所で逮捕・勾留されている被疑者または被告人が、施設内の接見室において外部の者と面会すること。一般接見の場合、立会人がおり、面会時間・回数に制限がある。弁護人接見の場合は立会人なし、面会時間・回数の制限も原則なし。
共犯事件や薬物犯・組織犯罪などの場合、証拠隠滅防止の観点から犯罪に関係する可能性のある者との接見禁止(面会・書類の授受の禁止)を付されることがある。一定の範囲の人物であれば請求により接見禁止の解除が認められることがある。
【差入れ/宅下げ】
警察の留置施設や拘置所で身体拘束を受けている者に外部から物を渡す行為が差入れ。身体拘束を受けている者が外部の者に物を渡す行為が宅下げ。差入れ及び宅下げできる物には制限がある。
【示談・被害弁償】
加害者(被疑者・被告人)が、被害者に対し、謝意を示し、犯罪行為により発生した損害を補填することで民法上の和解契約を締結する。謝罪の上、賠償金を支払ったことに鑑みて被害者が宥恕(許す)した場合は、完全な示談となる。被害者の意向によって宥恕文言のない示談書を締結する場合、示談書を取り交わさず弁償のみを受け取る場合(被害弁償)もある。
【身柄釈放・身体拘束からの解放】
勾留中の被疑者・被告人を準抗告や勾留取消請求、保釈等で留置施設または拘置所から外部に開放すること。
【検察官による処分】
捜査の結果、検察官において行う最終の判断。公判請求、略式起訴、不起訴がある。
【起訴・公判請求】
訴追権者である検察官が、裁判所に対し、捜査をした犯罪事実について適正な処罰を求める意思表示。
【略式起訴】
軽微な犯罪について、被疑者が被疑事実の存在を認め、手続に同意する場合、裁判所の書面による審理において、罰金刑を言い渡す手続。刑事罰ではあるため前科となる。
【不起訴】
検察官が事件について起訴(公判請求・略式請求)しないと判断する処分。不起訴の場合は前科にはならない。
嫌疑不十分の不起訴:犯罪が成立するに足りる証拠がない場合の処分。
起訴猶予の不起訴:犯罪の嫌疑は認められるが、諸般の事情から検察官が訴追の必要性なしと判断し、起訴をしない処分。
【処分保留】
捜査機関が、証拠不十分や被疑者の更正の見込みがある等の事情がある場合に、起訴・不起訴の判断を一時的に見送ること。
【追起訴】
ある犯罪事実で既に起訴された状態にある者について、検察官が同じ裁判所に別の犯罪事実で起訴し、本来の犯罪事実と併合審理することを求めること。
第3 起訴後の段階
【被告人】
検察官によって、裁判所に起訴され、判決を受けるまでの名称。
【拘置所】
法務省が所管する未決拘禁者(起訴後、判決を受けるまでの期間にある者)を収容する施設。定員の問題があり、起訴後も一定期間は警察署の留置施設での勾留を継続し、公判前に拘置所に身柄を移されることも多い。
【保釈/保釈保証金】
被告人勾留を受けている者が、請求を行い、裁判所の定めた金額の保釈保証金を納付することを条件に、判決までの期間の身体拘束を暫定的に解いて釈放するもの。保釈の際に付された保釈条件に違反すると保釈は取り消される。保釈条件を遵守し、逃亡することなく公判に参加して判決を受ければ、保釈保証金は全額返金される。
【公判】
刑事事件における裁判手続。公判期日に裁判所で行われる審理。
【裁判員裁判】
一定の重大事件について、職業裁判官と一般市民から選ばれた裁判員の合議体により行われる裁判。
【被害者参加】
犯罪の被害者が法廷において、証人や被告人に質問したり、意見陳述することで参加する制度。一定の重大事件のみ。
【被告人質問】
被告人が公訴事実や身上関係等について、法廷で弁護人や検察官から質問をうけ、回答する手続。
【論告求刑/弁論/最終意見陳述】
論告求刑:裁判所が下す判決についての検察官の意見。
弁論:裁判所が下す判決についての弁護人の意見。
最終意見陳述:弁論の後に被告人が法廷で述べる最後の意見。
【判決】
起訴された公訴事実についての裁判所の最終的な判断。実刑判決、執行猶予付判決などがある。
【実刑判決】
一般的な用法としては、執行猶予が付されない拘禁刑・禁固刑の判決。判決後、身柄は刑務所に収容される。
【量刑】
被告人に課すべき刑を法律に規定された法定刑の範囲で決める活動。
【執行猶予付判決】
判決において刑の言い渡しをするが、その全部または一部の執行を一定の期間猶予する制度。全部執行猶予では、猶予期間中に新たな犯罪行為により判決を受けることがなければ、刑の言い渡しの効力自体がなくなる。
【保護観察】
執行猶予付判決を受けた者が社会生活をする際に保護観察官と保護司が指導・支援を行い更正を促す制度。執行猶予付判決では不安が残る場合に判決に付される。
【控訴・上告】
第一審の判決に不服がある場合に高等裁判所に行う不服申立てが控訴。控訴審の判決に不服がある場合に最高裁判所に行う不服申し立てが上告。
第4 その他
【前科前歴】
前歴とは、過去に捜査対象となった事実(警察の微罪処分、検察の不起訴処分を受けた者)をいう。前科とは、過去に刑事罰を受けた事実(略式罰金刑、執行猶予判決、実刑判決を受けた者)をいう。
【余罪】
ある犯罪事実で捜査や起訴されている場合に、その対象となっていない別の犯罪事実。
【還付】
捜査機関や裁判所が捜査や裁判のために押収した物を所有者等に返還すること